iPhoneを使用している方はご存知の通り、電話アプリの「ライブ留守番電話」をオンにしておけば、着信20秒後に留守電になりメッセージの文字起こしもしてくれる。キャリアの留守電サービスを使うまでもない。
加えて、iOS26になると、スクリーニング機能が追加された。

スクリーニングとは
連絡先に登録されていない番号から着信があった場合、「通話の理由を尋ねる」または「消音」に設定すると、着信音がなる前に留守電が実行される。
- 「通話の理由を尋ねる」の場合
「名前と用件を録音してください。発信先が応答できるかどうか確認します」とアナウンスが流れる。
20秒ほど経つと、メッセージが何も残されなくても、「ありがとうございます。通話を切らずにこのままお待ちください」とアナウンスが流れ、受信側のiPhoneの着信音が鳴る。 - 「消音」の場合
「この通話は、留守番電話に転送されました。発信先は、現在電話に出ることができません。発信音の後にメッセージを録音してください。録音が完了したら、電話を切ることができます」と、アナウンスが流れる。受信側のiPhoneには通知はない。
いずれも履歴には残り、わたしは「通話の理由を尋ねる」に設定していた。
さて、パソコンをいじっていたら、画面にスクリーニング中の通知があり、発信側の電話番号が表示された。わたしは、はじめての経験だったので、なんだ? と思った。
このご時世、トクリュウを疑ってシカトしていたら、今度は留守電のメッセージが文字起こしされて通知された。
『もしもし、清水(仮名)です もしもし』
わたしは “清水” を見て、思い当たる人物がひとりだけいた。それは、わたしが会社を廃業するまで契約をしていた技術者だった。
でも、変だ。清水さんは連絡先に登録しているので、スクリーニングが実行されることはない。番号変えたのか? と、思っていると、iPhoneの着信音がなった。iPhoneの画面にも清水さんの名前は表示されず、090ではじまる番号だった。
出るべきか一瞬考えたが、詐欺だったら、ちょっとからかってやろうかと言う気持ちが起こり、電話に出ることにした。
「はい」
「あ、汐見さんですか?」
「はい」
「清水です。汐見さんの会社でお世話になった清水です。お元気そうですね。汐見さんがお付き合いしていた会社の社長もお元気ですか?」
清水さんの当時の商流は、『クライアント – SIer – A社 – 弊社 – 清水さん』で、わたしはA社の社長と何度か打ち合わせをしたことがあった。
話の辻褄が合う。ただ、不審に思ったことがふたつあった。
一つ目は、わたしが知っている清水さんとは別人の声で口調も違ったこと。
二つ目は、「お付き合いしていた会社の社長」と、回りくどい言い方をしたこと。清水さんは、この社長と現場で毎日のように会っていたので、社長の名前をいうはずだ。
「清水さん」
「はい」
「んー、わたしが知っている清水さんと声が違うんですよ」
「え! そんなぁ、ははは。清水ですよ」
名前を言う時、ちょっと俗っぽい声に聞こえた。あやしくなってきたぞ。
「清水さん、わたしとはじめて仕事をしたのはいつですか?」
「え、汐見さんの会社で仕事・・・」
「いいえ、わたしの会社の前に一緒に仕事をしましたよね。もう30年も前になりますけど。お客はどこでしたか?」
「えー、そんな前・・・えーっとぉ・・・」
「教えてください」
すると、清水さんがわたしを訝ってきた。
「あなた、汐見さんじゃないですよね、誰ですか?」
「いいえ、わたしは汐見です」
「はぁ・・・」
「・・・」
「あの〜、90歳の汐見さんですか?」
き ゅ う じ ゅ う っ さ い !?
「いいえ、90歳ではありません」
「あー、失礼しました。間違って電話しちゃったようです」
「そうですか」
「申し訳ありませんでした」
「いいえ」ポチッ。
なーんだ、単なる間違え電話だったのか。それにしても、途中まで会話が成立してしまうなんて、アンジャッシュの「すれ違いコント」みたいじゃないか。
と、この文章をここまで入力している時だった。
はっと頭をよぎった。
あれぇー、90歳の汐見って、義父のことか?
と、言うのも、わたしのスマホはメインとサブの2回線利用していて、メインは、2年前に亡くなった義父の携帯電話番号を名義変更して使っている。
義父は2012年の82歳の時に会社を廃業した。清水さんは義父の会社の社員だったのか? 義父が生きていたら、今年で96歳になる。10歳と16歳は、成長期で大きな差があるので疑う余地はあるが、90歳と96歳はあまり変わらないので疑いようがない。清水さんが義父の正確な年齢を覚えていないことも考えられる。
昨日の電話では、端から詐欺を疑い、ぶっきらぼうな態度を取ってしまったからなぁ。幸い清水さんの電話番号は履歴に残してあったので、確認で電話をすることにした。
清水さんもこちらの電話番号を連絡先から削除しないでいたのだろう、電話に出ると、初っ端に、「あー、昨日はすみませんでした」と、謝ってきたので、わたしは恐縮しながら、義父の氏名を言うと、清水さんは、「そうです」と答えた。
清水さんは、義父の会社の元社員だった。久しく義父と連絡を取ってなかったので、電話を差し上げたと言った。わたしは、昨日の電話での非礼を詫び、わたしが義父の娘婿で、義父の携帯電話番号を使っていること、義父母ともに亡くなったことを伝えた。
清水さんは70代前半。義父は廃業する時、仕事関係のコネは全て、社員数名に譲った。清水さんは仕事を譲ってもらった元社員の会社でも働いていたが、その元社員(社長)が数年前に亡くなり、後を引き継いで今も仕事をしていると話した。
わたしは、「これからも暑さが続きますので、くれぐれもご自愛ください」と、言って電話を切った。



















