送り盆

 新盆は「しんぼん」「にいぼん」「あらぼん」と、地域によって読み方が異なり、「初盆(はつぼん/ういぼん)と新盆の違いは何?」と言う人もいれば、旧盆に対して新盆と言う人もいる。わたしの母は、「親が亡くなって、はじめてのお盆を新盆(にいぼん)って言うのよ。同じ漢字だから紛らわしいわよね」なんて言っていた。

 正誤問わず、人それぞれに認識が異なるので、本稿では「7月盆(新暦盆)」「8月盆(旧暦盆)」で話を進める。

 毎年、我が家では7月盆にご先祖様をお迎えしていたが、義父母が亡くなり妻と二人暮らしになってからは、8月盆にお迎えするようになった。なぜ、変えたのかは、妻の鶴の一声でそうなったので、わたしは知らない。

 迎え盆に玄関の外で迎え火を焚き、迎え火蝋燭を仏壇の蝋燭に移すわけだが、迎え火が玄関を入った途端消えてしまったり、居間のエアコンの風で消えてしまったりと、毎年迎え火が仏壇まで消えないよう慎重になる。送り盆も同様だ。

 仏壇には妻が3日間作る、霊供膳(親椀、汁椀、平椀、壺椀、高坏)と、お菓子、果物、乾物などをお供えして、線香を上げて般若心経を唱えている。

 迎え盆のお迎えを済ませ、妻にこんな話をした。
「それにしてもご先祖様は、ほんとうに帰ってきてるのかね。一度も姿を見たことがない。気配すら感じない。帰ってきてるなら、姿見せろってんだよな。そしたら、お義父さんと酒が飲めて楽しいだろ」
「はは、そうだね」
「君はお盆に(ご先祖様の)姿見たことある?」
「ない」
「だろー。面白くもなんともない。深夜に居間でお義父さんとお義母さんが酒を飲みながら話をしていたら、おれも一緒に飲むよ。おーい、お姿見せてくださーい」

 今年もご先祖様の気配の気の字も感じないまま、夕刻、仏壇の蝋燭に火をつけて、線香を上げて、般若心経を唱えて、送り火蝋燭に火を移し、玄関の外で送り火を焚いて送り盆を済ませた。

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