通夜でサシ飲み

 昨夜は高校時代から付き合いのある友人(喪主)の父親の通夜に参列した。

 数日前、友人から電話があり、父親が亡くなったことを話すと、
「実はお願いしたいことがあるのですが・・・」
 と、畏まった言い方をしてきた。

 葬式のお手伝いかな? 喪主をお願いしたいなんてことはない。
「受付?」
「う、あ、そ、そうなんだけど・・・」
「うん、いいよ。日にちは?」
「6月2日なんだけど」
「ちょっと待ってね」
 わたしはカレンダーでその日の予定を確認すると妻は仕事だった。
「その日はかみさんは仕事なんだよね。おれだけでも大丈夫?」
 と、聞くと、友人は大丈夫と答えた。

 通夜の詳細は、LINEで送ってもらうことにして電話を切ると、しばらくして友人からLINEが届いた。

 そして、通夜開始1時間前に来て欲しいとあったので、わたしは余裕をもって30分繰り上げて行くことを返信した。


 通夜当日、式場に着くとまずは友人と会い、それから式場スタッフに受付と会計管理について説明を受け、わたしは受付3人のひとりとなった。

 そして、参列者が来る前に芳名カードに記入すると、故人との関係欄で、わたしは「友人」にチェックを入れた後に、違う違う亡くなったのは友人ではないと、間違いに気がつき二重線で訂正して、「その他」にチェックし直し、カッコ書きに「喪主の友人」と書こうとしたら、今度は喪主の「も」ってどんな漢字だったけ? と、失念しスマホで調べた次第だった。

 漢字は読めるのに、書けないのはなんでだろ? わたしだけではないと思う。

 定刻通り通夜がはじまり、滞りなく通夜が終わると通夜振る舞いで別室へ移った。友人は参列した人たちのテーブルを周り、一通りお礼を済ますと、わたしの隣の席に座りサシ飲み開始、献杯。

 近況を話しあったり、サシだから言える話をしたり、友人は父親が地主だったので、「遺産相続でこれからが大変だよ」と、言っていたが、犬神家の一族になりませんよーに。

 高校時代の話になると、答え合わせをするように、あんなことあった、こんなことあったと懐かしく談笑したが、なんだろな、お互い都合の悪い思い出は、記憶を封印しているものだ。

 わたしが封印した記憶は友人が封印を解きやがって、友人が封印した記憶はわたしが封印を解いても、友人は全く記憶にございませんだったりして、愉快愉快。

 なお、友人は電話では父親の死因は老衰と一言で済ませていたが、実際は10年前に父親は腎臓を患い、歩行が不自由になり、それからは自宅で友人の兄(2年前に死去)と友人が日替わりで面倒をみたり、施設を利用したりして、施設で父親の病気が悪化したため入院して病院で亡くなったと話してくれた。10年間精神的にも肉体的にも負担が大きく、気の休まることがなかったことだろう。

 気がつくと、通夜振る舞いはわたしと友人の二人だけになっていた。
 わたしはコップのビールを飲み干すと、友人に、
「そろそろ帰るよ。四十九日が終わり落ち着いたらLINEちょうだい。また飲もう」
 と、言って式場を後にした。

 ご尊父様のご逝去を悼み 謹んで哀悼の意を表し お悔やみ申し上げます
(-人-)

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