半世紀ぶりの銭湯

 1 週 間 の 話

月曜日

 夜、わたしの入浴後の妻の入浴中に、ユニットバスの水栓のお湯が止まらない不具合が発生した。

 ユニットバスの水栓のシャワー吐水から通常吐水(蛇口)にハンドルを切り替えても、通常吐水口からお湯は出ずにシャワー吐水のままで、ハンドルを止水位置にしてもシャワーからお湯が出っぱなしになるのだ。

 不幸中の幸いだったのは、シャワーヘッドには止水機能があったこと。それでお湯を止めることができた。

 でもって、更に不幸中の幸いの幸いだったのは、通常吐水側で通水しっぱなしでなかったことだ。もし通常吐水側だったら、水道の元栓を止めなければならないことになり、そうなると家中の水道が使用できなくなっていたからだ。

 今のユニットバスになって11年目になる。パッキンがいっちまったのかな? 説明書を見ると、水栓は分解不可とあった。

火曜日

 午前、説明書に記載されたサポートセンターに電話をすると、15時半頃にようやく業者から電話があり、やり取りをしていた妻が突然声のトーンを上げて、
「えー、そんなにかかるんですか!」
 と、驚いていたので、電話を切った後にいつ修理に来るのか聞くと、妻は、
「土曜日だって」
 と、答えた。
 Ψ(`◇´)Ψ

 土曜日かぁ。今夜は風呂を諦めたとしても後3日も風呂無しは辛い。わたしが真っ先に頭に浮かんだ佐倉天然温泉『澄流』は、徒歩で到底行ける距離ではない。妻はスーパー銭湯に行こうと提案してきたが、電車とバスを利用しないと行けない距離だ。

 もう普通の銭湯でいいだろうとなったが、銭湯は公衆電話を探すのと同じくらい大変になった今日。果たして徒歩で行ける距離に銭湯はあるのだろうか。

 すると、妻がピンときたのが『松の湯』だった。
 うん、ここなら自宅から徒歩でも行ける距離だ。しかし、定休日が毎週水、木曜日だった。残念。

 他はないかとネットで調べると、『浜町浴場』があった。自宅から徒歩20分弱で行ける距離だ。定休日も毎週火曜日(祝日の場合翌日)。ガリウム石温浴泉で、アメニティーとしてボディソープとリンスインシャンプーが設置されている。いいじゃん、ここにしよ。

水曜日

 15時過ぎ。タオル・バスタオル・着替えの下着と靴下持参で、妻と自宅を出て浜町浴場へ行った。

 下駄箱に靴を入れて札を取り、待合室の番台で入浴料を支払い、当たり前だがわたしは男湯、妻は女湯に別れた。

 ロッカールームですっぽんぽんになり、タオルを持ってロッカーの鍵を閉めてキーバンドを手首に巻いて大浴場に入ると、右角がサウナルーム、左角が上がりシャワー、右側が洗い場、左側が浴槽、浴槽の左外が露天風呂になっていた。

 まずは洗い場に。頭、顔を洗い、それから体を洗っている時だった。鏡になんか綺麗な模様が映ったのだ。

 何かな? と後を見ると、あらら、背中一面刺青の入浴客だった。
 ∑( ̄ロ ̄;)!

 今では、タトゥーと言われ、ファッションのひとつにもなっているが、昭和の時代は刺青者と言えば、イコール“ザ・ヤクザ”だった。しかし、実は漁師も刺青を入れる人が多かったのだ。因みに和彫りが「刺青」、洋彫りが「タトゥー」になる。

漁師が刺青を入れる理由

 本人確認のため。漁師が海に攫われ、死後数日が経った溺死体になると顔の損壊も酷くなり、誰だか識別できなくなる。そのような時に背中の刺青でどこどこの誰々だと分かるわけだ。

浜町は今も昔も漁師町

 今では商業施設も増え、昔のような漁師町の活気はなくなったが、それでも近くには船橋漁港があり、れっきとした漁師町だ。

 全国には“刺青お断り”の温泉や浴場・プールもあるが、浜町浴場では、てやんでえだ。昭和の時代、浜町浴場には刺青背負った入浴客が多かったことだろう。

 ただ、浜町には今もヤクザの事務所がある。わたしの後ろにいた50〜60代に見えた強面の刺青男は、どっち系だったのだろうか。ま、どうでもいいか。

余談:刺青者

 江戸時代まで遡ると、ヤクザ(渡世人)に限らず、鳶、大工、飛脚、左官、漁師、魚屋、町火消し、船頭、芸妓、舞妓、料理人、駕籠かき、人夫、人足、渡り中間など、農民以外の労働者や職人も刺青を入れる者が多かった。武家の遠山景元(遠山金四郎)も桜吹雪の刺青(彫り物)入れていたしね。

余談:もんもん

 背中に背負った刺青を「もんもん」とも言うが、もんもんの由来は、背中一面に彫った不動明王の変化身「倶利伽羅竜王」を「倶利伽羅紋々(くりからもんもん)」と言ったことがはじまり。


 さて、浜町浴場の浴槽は段差を設けた流れ風呂で、4つのブロックに仕切られていた。1ブロック目から滝の湯が流れ出て、お湯が2ブロック目、3ブロック目、4ブロック目と流れていた。 

 体を洗い終わった後、4ブロック目に入浴した。んー、お湯の熱さがわたしにはやや物足りない。浴槽も内回りは腰掛けられるようになっていたが、胸までしか湯に浸からない。それに道後温泉のように湯船の底が深く立湯だった。落ち着いて首まで浸かることができなかったので、数分浸かって3ブロック目に移った。

 こちらは座湯で、底の数箇所から勢いよく泡がぶくぶくと噴き出ていた。背中が刺激され気持ちいい。お湯の熱さも丁度良い感じ。2〜1ブロックへ移ることなくここで落ち着く。

 15分ほどまったりと浸かった後、露天風呂へ向かった。がしかし、妻のことが気になった。わたしがゆっくり風呂を楽しんでいる間に、妻が先に風呂から出ていたら待たせることになる。わたしは露天風呂もサウナもやめて、風呂を出ることにした。

 ロッカールームでしばし涼んでから衣類を着て待合室に出ると、妻は椅子に腰掛けていた。

 待合室が男女共有になっているのはいい。銭湯の外で、『♪いつも私が待たされた』なんてことはないし、真冬でも、『♪洗い髪が芯まで冷えて』なんてこともない。


 浜町浴場を出ると、妻が、
「帰ったら、まずはビール飲みたいでしょ」
 と、言ってきたが、わたしの喉は既にカラッカラ。外にあった自販で麦茶を買って、ひとまず喉を潤してから家へ向かった。

 なんだろな、この感覚。旅行先の温泉にきた気分になった。途中買い物をして14時半頃帰宅。言うまでもなく妻と飲み開始。くぅ〜ビールがうまい。

木曜日

 風呂無し日。

金曜日

 15時過ぎに妻と自宅を出て浜町浴場へ。予め妻には今日はゆっくり風呂に入るからと伝えておいた。

 一昨日と同様に体を洗ってから、一昨日は入れなかった1ブロック目、2ブロック目、露天風呂、サウナを十二分に満喫してロッカールームに戻ると、待合室から妻と番台の女将さんの話し声が聞こえた。後で妻に聞くと待合室で10分ほど待ったと言っていた。妻はかたっぱしから入りまくったようだ。

 待合室では、風呂上がりの一杯とばかりに、缶ビール(350ml)をぐびぐびと飲んで、しばし休憩。買い物をして帰宅した。

土曜日

 14時過ぎ、業者さん来訪。
 水栓不具合の原因は、水垢1で、「サーモスタットシャワー切替弁ユニット」が効かなくなっていたことだった。なんのことはない、この部品を交換して正常に戻った。

 業者さんの話では、千葉県は水道水の硬度が高いため、他県よりこのような不具合が多いと言っていた。

 なお、水栓左側の温調ハンドルは構造も部品も異なるので、このような故障は起こらないとのこと。

千葉県の水道水の硬度は全国一

 HYDLEDGEの「都道府県別平均硬度ランキング」を見ると、千葉県は2位の埼玉県を大きく引き離し、ダントツで1位だった。

都道府県別平均硬度ランキング(投稿日現在)

 1位 千葉県:80.13mg/L(約80〜97mg/L)
 2位 埼玉県:68.57mg/L
 3位 熊本県:68.49mg/L
 4位 茨城県:67.35mg/L
 5位 東京都:63.78mg/L
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 43位 島根県:28.52mg/L
 44位 宮城県:26.61mg/L
 45位 広島県:25.62mg/L
 46位 山形県:24.3mg/L
 47位 愛知県:22.29mg/L

WHO(世界保健機関)による硬水と軟水の基準

  • 軟水: 60mg/L未満
  • 中程度の軟水: 60〜120mg/L未満
  • 硬水: 120〜180mg/L未満
  • 非常に硬い水: 180mg/L以上

 水1リットル中のカルシウムとマグネシウムの総量(硬度:mg/L)に基づき4段階で定義。一般的に、硬度120mg/L未満を「軟水」、120mg/L以上を「硬水」と呼ぶことが多い。

  1. 水道水に含まれるミネラル分(カルシウム、マグネシウム、ケイ酸など)が白く結晶化したもの ↩︎
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