
録画していた、『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』の「韓国を席巻! 映画『Love Letter』の衝撃」を観た。
神戸に住む渡辺博子(中山美穂)は、2年前に山の遭難事故で亡くなった婚約者・藤井樹(柏原崇[中学時代])の三回忌の法事後、樹の家を訪れる。
博子は、そこで見た樹の中学時代の卒業アルバムから、樹が昔住んでいた小樽の住所を見つけ、忘れられない彼への思いから、その住所へ手紙を出す。
すると、届くはずのない返事の手紙が博子の元にくる。それをきっかけに文通がはじまるが、やがて博子は、文通相手が樹の中学時代、3年間同じクラスだった同姓同名の同級生の女性、藤井樹(中山美穂[二役]・酒井美紀[中学時代])だったことを知る。博子が樹(男)の昔住所だと思っていたのは、樹(女)の現住所だった。
*公開:1995年(岩井俊二監督の長編デビュー作)
*時代背景:アナログ時代の1995年。国内携帯電話(PHS含む)の人口普及率、約3.5%
『Love Letter』は、全国のミニシアターで公開され、各賞受賞も多かったわりには、興行収入は振るわなかった。
しかし、中国、韓国、台湾では人気を博し、特に韓国での反響は凄まじかった。1995年当時の韓国では、日本大衆文化は禁止されていたにも関わらず、海賊版(違法ビデオ)『Love Letter』を観た韓国人は30万人もいたと言われている。
そして、金大中政権期の1998年、文化政策として日本大衆文化が段階的に開放され、1999年11月20日に『Love Letter』が映画館で公開されると、140万人の観客を動員する興行記録(実写日本映画では現在も1位)を打ち出し、劇中の博子のセリフ、
「お元気ですか?」
は、流行語になる社会現象を起こし、その後9回もリバイバル上映された。
わたしは、丁度その頃の1999年7月から2000年のGW前まで、ACOSからAS/400へのシステムコンバージョンの仕事で、自動車部品メーカーの本社と工場2か所を転々と出張していた。
仕事仲間には他社から参画していた韓国人技術者が3人いて、ひとりは日本語が堪能で、わたしより数歳下だったが、そりが合い、職場では会話をしたり、社食や外食も一緒に取ったりして、仕舞いには、彼が就労ビザの更新等で一時帰国した時、彼に通訳をしてもらいソウルや釜山を旅行するまでになっていた。
ある日、彼と職場の食堂で休憩をしている時、何の気無しに、日本映画を見たことがあるかと聞くと、彼は、
「ラブレター」
と、即答した。
わたしが、
「ラブレター?」
と、首を傾げると、
「中山美穂の『Love Letter』です」
と、返してきた。
そう言えば、そんな映画あったなぁ。
「どんな映画?」
と、聞くと、あらすじを言うのが面倒くさかったのか、
「んー、ラブストーリーです。“お元気ですか?”が有名です」
と、答えただけで、続けて、
「いい映画ですよ〜 是非一度観てください」
と、返されたのを覚えている。
しかし、当時のわたしは、アイドル主役映画は薄っぺらく、ガキンチョかファンが観るものと端から決めつけていたので、『Love Letter』を観ることはなく、今日に至っていた。
ところが、冒頭で記した『アナザーストーリーズ』を観たら、兎にも角にも『Love Letter』が観たくなったのだ。
この回の『アナザーストーリーズ』は、『Love Letter』の後付けプロモーションビデオかテレビショッピングと言ってもいいほど、『Love Letter』への関心を惹く、気付け薬のような内容だった。
早速、Amazon Prime Videoにないかなぁと検索したら、
あったーーー!
☆:.。. o(≧▽≦)o .。.:☆
普段、妻に強気な口調で話すことはないが、この時ばかりは、
「『Love Letter』観るぞ!」
と、赤影参上!のような雄々しい口調で告げていた。よく分からないが、それほど興奮していたのだろう。妻は同意してくれて一緒に鑑賞した。
まとめ
中学時代の樹(男)は、樹(女)に密かな恋心を抱いていた。図書室の誰も借りることのない本を、読みもしないのにいくつも借りては、図書カードに“藤井樹”と書いて、樹(女)にそれとなくアプローチしていた。
樹(女)は、それに全く気づいていなかったが、図書室で樹(男)に、
「誰か他に好きな女でもいるの?」
と、問い詰めるシーンがある。
樹(女)を演じる酒井美紀の表情から、樹(男)に幾許かの感情を抱いていたことが窺われる。
樹(女)は、博子に頼まれて、樹(男)が通っていた中学校の写真を撮りに行った時、当時の担任から、樹(男)が2年前に亡くなったことを知らされる。
博子は樹(女)と文通をしているうちに、樹(男)は転校後も樹(女)のことが忘れられず、彼女の面影を自分に重ねていたのではないかと思うようになる。博子が樹(女)に宛てた最後の手紙でも、
追伸
あの図書カードの名前、ほんとうに彼の名前なんでしょうか?
彼が書いていたのが、あなたの名前のような気がして仕方がないのです。
と、書いている。
博子が、樹(男)が遭難した冬山に向かって、
「お元気ですか?私は元気です!」
と、何度も叫ぶシーンは圧巻だった。
博子が樹(男)との“別れ”を告げ、前を向いて歩んでいくことを決めたシーンだった。込み上げるものがあった。
同じ頃、高熱で病院に運ばれた樹(女)も、ベッドに寝ながら、
「お元気ですか?私は元気です」
と、うわ言をいう。
ある日、樹(女)の自宅に後輩たち(図書委員の女子高生たち)がきて、1冊の本を渡され、図書カードを見るように言われる。樹(女)は本から図書カードを抜き取ると、樹(男)の字で“藤井樹”と書かれているだけの何の変哲もないものだった。
ところが、後輩たちから図書カードの裏を見るように促され裏返すと、そこには樹(男)が鉛筆で描いた、樹(女)の顔が大きく描かれていた。

これには伏線があり、樹(男)は転校する直前に、樹(女)の自宅を訪問して、この本を図書室に返却するように依頼していた。樹(男)は図書カードの裏の絵に気がついて欲しかったのだろう。樹(女)への最後のアプローチだった。
樹(女)は、図書カードの裏に描かれた自分の顔を見て、樹(男)の恋心の真相を確信し、彼女自身も樹(男)が初恋の相手だったことに気が付く。
樹(女)は、ワープロで、
我が不思議なるペンフレンドの渡辺博子さん
お元気ですか?
(中略)
それより今日は、ちょっとすごいことがあったんです。
(中略)
それは、思いがけない訪問者によって持たされました。
と、入力したが、手紙を送ることはやめて、
拝啓
渡辺博子さん
やっぱり照れ臭くて、この手紙は出せません。
と、心の中で締めくくり、エンドロール。
ふたりは、これ以降文通を交わすことはなかったことだろう。何故ならば、文通を続ける理由がなくなったからだ。
思いがけず、いい映画をみた。酒井美紀がかわいいね。鈴木蘭々の独特な演技には、思い出しただけでフフッと笑いが出る。


















