人 名 は 全 て 仮 名 で す
昨日、ヤマト運輸の「お荷物お届けのお知らせ」がLINEにきた。トークを開いてみると、
『坂本佳代(旧姓:宮沢)様からのお荷物をお届け予定です。』
と、記載されていた。
坂本佳代? わたしには全く身に覚えのない名前だった。旧姓も記憶にあるのは、高校時代の友人しか思い浮かばず、それも男子だ。もう20年以上会っていないし、連絡も取っていない。
荷物の受け取り方法には、「対面での配達を希望」、品名には「07_繊維ギフト」と記載されていたが、送り主の住所は「対面」になっていて、受け取るまで住所も電話番号も分からなかった。
ネットで“坂本佳代”“宮沢佳代”を検索しても、若い女性の画像が表示されるだけで、一覧のサイトからはなんの手がかりも見つからなかった。
妻にもLINEを見せながら、
「この女性知っている?」
と、聞いたが、妻も知らない名前だった。
お届け物詐欺か? 不安になる。受取り拒否しようか。でも、ひょっとしたらわたしの記憶の机の引き出しが頑なに開かないだけで、ひょんなことから、引き出しが開き、あーあの人かと思い出すことも考えられる。
とりあえず、時間指定をして、本日午前に荷物が届いた。そして、ラベル(送り状)の送り主の住所を見ると、『滋賀県甲賀市******』と印刷されていた。
甲賀市!? 忍者の里じゃないか。益々怪しい。怖い。
Googleマップに住所を入力してストリートビューで確認すると、住宅地にある普通の戸建住宅だった。電話番号もネットで調べると、別段あやしい番号でもなかった。
しかし、それでも開梱せずに荷物と睨めっこしていると、妻が、
「送り主に電話してみればいいじゃない」
と、言い出した。
電話をかけたら、海外に転送され高額請求されるようなことになったらどうする。電話を躊躇っていると、妻が、
「あんた、臆病だね」
と、笑いながら言ってきた。
わたしが臆病なのかどうかはほっといて、基本こういう場合は、寄らば大樹の陰だ。この時の大樹の妻に、
「じゃあ、電話してよ」
と、委ねて、携帯電話は避け、固定電話から電話をしてもらった。
妻が電話をかけていると、
「あ、転送された」
と、言った。
やっぱり、詐欺だったのかと疑いだすと、
「あ、もしもし、わたくし・・・」
と、妻は先方と話し出した。そしてしばらくすると、妻は受話器の送話口を抑えながら、
「あなた、喪中はがきが届いた人にお悔やみの品を送ったじゃない。その方の親戚みたいだよ」
と、話しかけてきたのだ。
11月初旬、お世話になった女性から、ご主人が亡くなった喪中はがきが届き、既に葬儀は済ませていたので、お悔やみとして和菓子を送っていた。わたしは妻と電話を変わった。
ところが、確認のため、喪中はがきを送ってくれた女性の名前を出すと、先方は黙り込んでしまい、うんともすんとも返ってこなかったので、
「もしもし」
と、話しかけると、先方は、
「あの〜、大友からお悔やみの品を渡され・・・」
と、話だし、わたしはハッとした。
大友とは妻の父方親戚で、12月初旬に奥さんの母親がなくなった喪中はがきが届き、大友さんにはわたしと妻の連名で、お悔やみのお線香を送っていた。
わたしは電話の送話口を抑えながら、妻に、
「大友さんだよ」
と、言うと、妻は即反応して電話を変わり、しばらく話をして電話を切った。
坂本佳代さんは大友さんの奥さんの姉だった。恐らく坂本さんが亡くなった母親の喪主だったのだろう。大友さんに送ったお悔やみの線香が、坂本さんに渡され、お返しは不要と一筆入れていたが、礼を欠くと、ご丁寧に返礼の品をお送りくれたのだ。詐欺の疑いが晴れて安堵した。

















