甲子園出場校はつらいよ

 現在開催中の第107回全国高等学校野球選手権大会。昨日ベスト8が出揃った。今大会は伯仲した試合が多く、テレビ観戦を楽しんでいる。

 手前味噌になるが、我が母校は過去に春の選抜大会と夏の全国大会に1回ずつ出場していて、はじめて甲子園出場したのは、わたしが在学中の春の選抜大会だった。

 今回の同大会千葉県大会では、久々に決勝まで進み、甲子園出場を大いに期待したが、激闘の末に敗れ、甲子園への切符を手にすることができなかった。残念でならない。

 ただ、10年ひと昔なら、わたしはそれを遥かに超える40数年前に母校を卒業している。これだけ歳月が流れると、わたしが野球部だったとか、今も母校のイベントに協力しているとか、なんらかの繋がりがいないと母校への思い入れが薄れるものだ。

 千葉県大会準決勝では、母校は習志野市の高校と対戦した。当然わたしはテレビ中継を見ながら母校を応援しはじめたが、そのうちにわたしは習志野市民だったよなと思ったら、母校愛と市民愛が交錯しだし、これと言った贔屓が見出せぬまま、どちらが勝ってもいいやと言う気持ちになった。

 このような感覚は、わたしだけなのかなと、あえて口にすることはなかったが、先日飲み交わした、高校時代から付き合いのある船橋市民の友人も、決勝戦はわたしと同じ気持ちになったことを話していた。


 さて、甲子園出場が決まった学校では、「おめでとう!」と、手放しで喜んでもいられない。

 元々野球に力を入れて、名の知れた監督のもと、選りすぐりの選手を集め、野球部の施設も環境も充実した甲子園常連校と呼ばれるような高校では、タニマチ(支援者)も多く、資金も潤沢で予算も立て易いと思う。

 しかし、極端な話、
「我が校は、勉学重視で、スポーツ部はサークル活動です」
 と、スポーツには力を入れていない高校の野球部が、地方大会であれよあれよと言う間に勝ち進み、甲子園出場! なんてことになったら、校長の頭の中は、なにしてくれとんねんだろう。

 過去の甲子園出場校には、飲酒・喫煙・暴力などの不祥事から甲子園出場を辞退したり、今大会でも1回戦は勝ったものの野球部の不祥事から2回戦を辞退した高校もあったが、
「お金がないので辞退します」
 は聞いたことがない。まあ、手をこまねいているだけで、なんの方策も立てずに予算がないだったら不祥事だか。

 『甲子園出場が決まったが、お金がない』みたいな、甲子園出場校が寄付金集めに奔走する裏舞台を映画にしたら面白そうだ。


 AIによると、甲子園出場校は、選手や応援団の交通費、飲食費、宿泊費、ユニフォームや用具の購入費、応援アイテム費用、記念グッズの作成費、事務費用などが発生すると回答した。

 甲子園がある兵庫県や近隣府県からの出場校と、遠方の都道県からの出場校では費用格差が生じるが、1試合で数百万〜1,000万円の費用がかかり、過去に青森県代表の八戸学院光星高校では、1試合あたりの費用が2,000万円かかったことがあったそうだ。

 優勝校の費用が1億円を超えることもある。自治体によっては補助金を出しているところもあるが費用全額は賄えない。したがって、出場校は全校生徒の保護者から寄付金を徴収したり、地元企業・商店街・団体などへ寄付金集めに奔走する。第100回記念大会で惜しくも準優勝となった秋田県代表の金足農業では寄付金は2億円を超え、最終的には3億円近くまで集まった。

 余談だが、過去にとある大手企業の社長が、地元代表校の寄付金依頼の件で、PTA会合に出席したら、学校・父兄らから寄付金を出すのは当たり前の態度を取られ、大枚の寄付金をくれてやったものの、憤慨したなんてこともあったようだ。この企業が甲子園出場をお願いしたわけではない。寄付金をもらいたいのならこうべを垂れよ、勘違いするな。


 ふと、わたしの高校在学中に野球部が甲子園出場した時、学校から保護者に寄付金の徴収があったのかどうか、まったく記憶になかったので妻に聞いてみた。
「うちらの時、寄付金の徴収はあった?」
「あったよ。1口10万円だった」
「じゅうまんえん!? それはないだろ」
「母が10万円寄付したのを覚えている」
Ψ(`◇´)Ψ

 しかし、1口10万円だったら、わたしの母はでんぐり返って大騒ぎしたと思うので、わたしも覚えているはずだ。
「1口10万円はありえない」
 と言うと、妻は、
「1口5万円だったかも」
 と値を下げてきたが、それでもわたしの母は騒いだと思う。

 どうも埒が明かない。わたしは高校時代の友人数人にLINEで質問することにした。すると、案の定わたしの友人らですから、期待を裏切らず「覚えてない」の返信がほとんどだったが、ふたりだけ、
「1万円だったよ」
 と、返信があった。

 うん、このふたりが言うのなら信憑性があり金額も妥当だ。1口1万円だったらわたしの母も慌てふためくことなく、1口寄付したと思うし、わたしが覚えていないのも納得で完結できる。妻の母親は10口寄付したってことか。

 ところで、学校側は大会後に支援者に対し、収支表を提出すると思う。
「寄付金は8,000万円集まりました。しかし、初戦で敗退したので、支出は1,000万円でした。よって、残った寄付金は野球部や学校の設備投資に使わせていただきます」
 と、言う報告は構わないが、果たしてその後の使途は明確になっているのだろうか。

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