友人がリースバックを考えていると言った

 一昨日午前、船橋在住の友人から飲みのお誘いLINEがあった。電話をすると、
「おいしい焼き鳥が食べたい」
 と言うので、鳥春(市川店)を勧めると、飲みの体力はあっても市川まで行く気力はなく、
「船橋詳しいだろ、探しておいてよ」
 と、船橋で飲むことになった。

 ん~船橋で飲むことが多いけど、行きつけのお店は3~4軒だ。あっちのお店こっちのお店と梯子酒をして良さげなお店をチェックすることもないので詳しくない。第一、船橋市民の呑兵衛のキミが習志野市民のわたしに船橋のことを頼むかね。

 とはいえ、近頃は予約しないと行きつけのお店でも入れないことがある。それに金曜日だ。急遽、ネットで良さげの焼き鳥屋を探し電話をすると、「すみませーん」。次に「鳥一(京成船橋そば)」に電話しようとしたが、「すみませーん」だったらめげる。

 もう行き当たりばったりでいいやと、18時京成船橋で友人と待ち合わせをして「鳥一」に行ったら、お客は多かったものの入店できた。


 サシ飲み開始。まずは生ビールで乾杯し、串はおすすめ三点盛りを二人分と鳥わさを注文した。先日サシ飲みした友人と同じような話になったが、突然友人が、
「よくよく考えてみると、ろくな事してこなかったよ」
 と、言ってきた。

 為念申しておくが、友人は別荘に行ったこともなければ、院卒(大学院じゃない方)でもなければ、ネリカンにお世話になったこともない。警察のお世話になったことも20代の頃に買ったばかりの新車をカーブで曲がりきれずガードレールに激突させてお釈迦にした時くらいだ。決してワルではないフツーの人だ。まあ、高3最後の試験では、選択科目を入れて7科目追試という強者つわものだったけどね。よく卒業できたな。

 わたしも過去を振り返ると、生活のためだけに、できる仕事だけを惰性にこなしてきたように思える。好きなことだけをやってきて、世のため人のため何かしようなんて気構えも向上心もなく、思い出すことは飲んだり遊んだりしたことばかりだ。納税してるくらいで何も社会貢献してないじゃないかと、考えることもある。友人も同じようなことを考えていたんだなぁと思った。

 ところが、友人の話はわたしの毛色と異なるものだった。思春期前の小学時代までロールバックして思い出話をし出したのだ。
「俺、いじめっ子だったんだ」
「いじめっ子!? 友達をいじめていたの?」
「それなはい」
「じゃぁ、いじめっ子じゃないじゃないか」
「うん、でもよ」
 と、小4の休み時間に友達らにプロレス技をかけて遊んだことを話した。そして、ある日クラスで先生が、
「嫌がらせをされている人はいますか?」
 と質問すると、手を上げた生徒が5人いて、全員が友人にプロレス技をかけられるのが嫌だと答えたそうだ。
「俺、驚いちゃってさ、嫌かっているとは全く思わなかったんだよ。みんなも楽しんでいると思っていたんだよなぁ。父親が学校に呼び出され、先生から俺が友達に嫌がらせをしていることを聞かされ、父親がクラスで生徒らに深々と頭を下げて謝っているのを想像したら、泣き出しちゃったんだよ」

 友人は、他にも同様の出来事を話した。いずれも悪気も悪意もなかったものの、今考えると「ろくな事してこなかった」というものだった。

 子供の頃のわたしはいたずら好きだった。自分は面白かった思い出や忘れてしまった出来事も、相手は酷い事をされた思い出として記憶に残っているかもしれない。

 話をすり替えるつもりはないが、良かれとした行動がありがた迷惑だったり、ちょっとした冗談が相手を傷つけたり、何の気なしに言っただけなのに激怒されたり、凄く感動されたり、ちょっと手伝っただけなのに驚くほど感謝されたり、ほんと子供でも大人でも他人の気持ちは分からないものだ。

 余談だが、友人は小4で身長が170cmあったそうだ。教師に間違われたこともあったと話した。今の身長は175cm。高校時代は1ミリも伸びなかったと言った。早々熟児だったんだね。


 アルコールも進み、串4本と1品を追加した頃、友人は自宅を売ってそのまま住む話をし出した。リースバックだ。

リースバック

 自宅を売却して現金を得た上で、引き続き同じ家に住み続けることができる不動産取引のこと。

メリット

  • まとまったお金が手に入る
  • 固定資産税がかからない
  • 家財・火災保険が必要ない etc.

いちばんのデメリット

  • 通常売却価格の約70%の売価になること
ざっくり例)一坪の土地売価50万円、敷地面積40坪で計算(建物価格は除く)

50万円×40坪×70%=1,400万円
(通常売価2,000万円)

 会社(買主)と定期借地契約を結び、毎月賃貸料を支払うことになるが、土地評価額や家の間取りなどで家賃が異なり、4LDK以上だと家賃が10万円以上になることもある。

例)家賃10万円で計算

10万円×12ヶ月=120万円/年
1,400万円÷120万円=11.7年
∴最長11年半で売却額がなくなる

 画像は『正直不動産』から抜粋したものだが、画像のような目的がある場合にリースバックを利用するのがいいのかな。なお、悪徳業者は通常売価の50%もぎっちゃうこともあるようだ。くわばらくわばら。友人には性急にならないようLINEで伝えた。


 さて、「鳥一」でどっぷり飲んで食べて談笑して、二軒目はいつものカラオケスナック「その」へ。前回来た時、友人は『夜汽車』で曲名選曲して、
「ない、ない、ない」
 と、泥酔した目でコントローラーと睨めっこしていたので、
「出だし口ずさんでみな」
 と言うと、
「♪花嫁は夜汽車に乗って〜」
「『花嫁』💨」
 と、コントにもならないやりとりがあったが、今回も同じことをしそうだったので、わたしは優しく、
「『花嫁』だよ」
 と、教えてあげた。

 友人は持ち歌のメモ帳をペラペラめくっては何曲も何曲も歌った。私も歌った。会計は「鳥一」ではわたしが支払ったので、「その」では友人に支払ってもらった。前回の時、友人はママにチップも渡していた。店を出てから友人は、
「ママの顔を見ているとチップあげたくなるんだよなぁ」
 と、わたしに言っていた。
 今回も友人はママにチップも合わせてお金を渡していた。
「あら、多いわよ」
「ママの顔を見ているとチップをあげたくなるんだって」
 と、わたしが言うと、ママはうれしそうな顔をして、
「ありがとうございます」
 と、受け取った。

 友人との別れ際、
「突然誘って悪かった。でも今日はほんとに楽しかった。ありがと」
 と、いつになくお礼を言われた。死期が近いのか?
「どういたしまして。くれぐれもご自愛ください。歩いて帰るの? そう、気をつけてね、そんじゃ」
 と、友人と別れた。


 帰宅したのは零時前だった。家飲みを済ませ居間のソファーにくつろいでテレビを見ていた妻が、ぬくっと立ち上がり、
「マック買っておいたよ」
 と、食器棚からビッグマックとフィレオフィッシュを出してテーブルに置いた。今日は締めラーメンも締めそばも締め牛丼もしなかったのでありがたい。マックフライポテトは妻の酒のアテとしてなくなっていたが、レンジでチンして牛乳飲み飲み締めマックした。よき日かな。

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