
去る5月6日〜8日、義父の四十九日法要・義母の三回忌法要で、妻と京都へ行ってきた。不幸は続くと言うが、義父が亡くなる前日も妻の叔母が亡くなり、妻は6日の叔母の四十九日法要にも参列するため、同日朝に自宅を出て、わたしより先に京都へ向かい、わたしは同日東京14時12分発博多行きのぞみ39号で京都へ向かった。わたしが参列できなかったことは後述する。
京都駅には定刻通り16時23分に着き、改札口を出る前に妻に連絡を入れておこうと、ズボンのポケットからスマホを取り出そうとすると、ん? え? あれ? スマホ・・・。
こう言う時は、まさか、いや、そんなことはないと、全否定するもので、わたしはジャンパーとシャツ、ズボンの全てのポケットをまさぐるようにしてスマホを探し、仕舞いには身体中を手のひらでポンポンと叩きだしたが、悪あがきは分かっていた。新幹線を下車する時、スマホをカバンに入れた覚えは全くなかった。現実逃避したくなるほど、はっきり思い出したのだ。
窓側の席に乗車中、「まもなく京都駅です」の車内アナウンスが流れると、わたしは窓側のコンセントから電源アダプターを抜き、スマホの充電ケーブルを丸めている時、窓下の小物が置けるスペースにスマホを置いたら落ちそうになったので、前席後面の網袋にスマホを入れたのだ。
そして、電源アダプターと充電ケーブルをトートバッグにしまい、窓側のフックに掛けていたショルダーバッグを取り、足元に置いていた、空の弁当箱とペットボトルを入れたナイロン袋を取り、肩からショルダーバッグを掛け、右手にナイロン袋、左手にトートバッグを持ち、席を立って一歩踏み出した時に、なんか踏んだ感じがしたので、足元を見るとハンカチを踏んでいて、ハンカチを落としたことも気が付かないとは情けない、でも忘れないでよかったとハンカチを取った時には、既に網袋のスマホのことは頭からすっぽり抜け落ち、スマホを置き去りにしたまま下車しちまったのだ。
心にぽっかりと穴が空き、冬でもないのに寒風が吹き荒ぶ中、ひとり虚しく佇む人になった気持ちだったが、スマホを開くにはFace ID認証もしくはパスコード入力が必要だったし、また京都のおっとりした風土も手伝ったのか、パニクることはなく冷静だった。
とは言え、以前も話したが、スマホにはクレジットカード、電子マネーアプリ、銀行アプリ等を登録していて、決済のほとんどをスマホで行っていたので、悪人の手に渡ったら最悪だ。急ぎJRの総合案内所を探して行き、口調からして、「うち、京都人どす」を感じさせる年配のJR職員にスマホを新幹線に置き忘れたことを話すと、お忘れ物の用紙を渡され、氏名と電話番号を記入して返した。
そして、一問一答方式でスマホの情報(キャリア、機種、色、ケース有無など)、乗車した新幹線の列車番号、号番、座席番号を答えると、JR職員は記入しながら、
「のぞみ39号は博多行きですから、見つかった場合、博多駅まで取りに行くか、着払いで郵送になります」
と、まるで東京駅から新橋駅へ行く程度の距離のようにさらっと言ってきたが、わたしも義父母の法事が終わったら、博多まで旅行がてらスマホを取りに行こうかと思ったりもした。
不幸中の幸いだったのは、妻の携帯電話番号を覚えていたことだった。皆さんはどうなのだろうか。家族の携帯電話番号はスマホの連絡先に登録していると思うが、その番号を空読みできますか?
わたしは妻の電話番号は何度も聞いていたが、いつも中4桁や下4桁の数字がうろ覚えで微妙に違ったりして、ちゃんと覚えたのはつい最近だった。この日のことを予知していたのか? したがって、わたしのスマホが見つかった時の連絡先は妻の携帯電話番号を記入して案内所を後にした。
さて、まずは妻と連絡を取らなければならない。わたしは公衆電話を探したが、今の時代、公衆電話は砂浜で無くした指輪を探すようなもので、なかなか見つけることができなかった。ならば、交番で聞こうと思ったが京都駅は広い。壁に掲示された構内案内図を見て、やっとのことで下京警察署京都駅警備派出所を見つけ、警官から公衆電話の場所を教えてもらい、漸く妻のスマホに電話をすることができた。公衆電話を使うなんて何十年ぶりだろう。
ところが、妻のスマホにかけたら、いきなり留守電サービスのアナウンスが流れた。『──録音後、終了するには1を、メッセージを確認するにはシャープ(#)を押してください』
「お疲れ様です。京都駅に着きましたが、スマホは新幹線に置き忘れ、博多へ行っちゃいました。わたしはホテルへ直行します」ガチャ。
そして、宿泊するホテルに行くため地下鉄の乗り場へ向かう途中、ふと、『終了するには1を』と、言っていたのを思い出し、「1」を押していなかったことに気がついた。押さないとメッセージは残らないのか? わたしは踵を返し公衆電話に戻り、同じメッセージを入れて今度は「1」をしっかり押してから電話を切り、地下鉄乗り場へ行った。
その頃妻は、叔母の法事を済ませ、親戚の車で京都駅へ向かっていた。そして、わたしに「八条口改札で待ち合わせ」のLINEを送ったが、既にわたしのスマホはのぞみひとり旅だったので、返信があるわけがない。
京都駅に着いてもわたしからLINEの返信がないので、ひょっとして寝過ごしたのではと、スマホのLife360アプリでわたしの位置情報を確認したら・・・神戸⁉️
このままではわたしが博多まで行ってしまうと、妻はわたしのスマホへ何度も電話をした。すると、わたしが新幹線を下車した後、わたしと同じ席に座った男性が、わたしのスマホから出てくれたそうだ。妻が、
「もしもし」
と、言うと、
「はい」
と、返事があったが、なんか違和感を覚え、
「藤泉庵さん?」
と、聞くと、
「いいえ、違います。スマホ置き忘れたみたいですよ😅」
と、返された。
そして、たまたま同号車に車掌がいて、この男性は車掌に状況を話してわたしのスマホを渡し、妻と車掌とで話をした。良識ある善良なる男性様、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
わたしがホテルに着きチェックインを済ませ、先にホテルに送っていた旅行用キャリーバッグとボストンバッグをフロントで受け取り部屋に入り、部屋の電話からゼロ発信で妻のスマホへ電話をすると、妻もホテルロビーに着いていて、部屋で合流した。
妻は京都駅でのぞみ39号の車掌とスマホで話をしてからわたしの留守電を聞き、妻もわたしと同じく総合案内所に行き、スマホを新幹線に置き忘れたことを届け出ると、件のJR職員から、「ご主人も先ほど来ました」と、言われたそうだ。因みに、妻のスマホには同じメッセージが2つ入っていたので、留守電を終了する時「1」は押さなくても録音されるようだ。
このような状況だったので、夕食は部屋飲みすることにして、近くの百貨店で買い出し中、妻のスマホに博多駅からの着信履歴があった。こちらから電話をすると、先方からわたしの物らしきスマホを預かっていると言われ、携帯電話番号を求められ、先方がスマホの着信確認をして、わたしの物であることが確認された。ホッとしましたよ。
スマホの受け取りは、着払い郵送を希望し、自宅住所を告げると、博多から千葉だと9日以降着になると言われた。8日まで京都なのでちょうどいいだろう。
7日、親戚の皆様にご出席賜り、当家の菩提寺で義父母の法事を済ませ、夕食は義姉夫婦と『炭火焼 京遊 祇園本店』で取る。
8日、10時過ぎにホテルをチェックアウト。妻と『臨済宗 大本山 南禅寺』を拝観し、昼食を『南禅寺 順正』で取り、京都15時21分発のぞみ30号に乗車して帰路に就いた。
さて、わたしが妻の叔母の法事に参列できなかった理由は、愛猫斑をペットショップのホテルに預けるためだった。
6日10時、ペットショップへ斑を預け、8日18時30分、斑を引き取った。時間にすると56.5時間、斑はペットショップにひとりでいたことになる。
猫をペットホテルに預ける期間は最長で1泊2日とか2泊3日が限度と言われている。斑は自宅では玄関フロアと事務所だけ入れないように注意して、他は野放しの家猫だ。毎日自由気ままにあっちいったりこっちいったりご探索しているのに、2泊3日ペットホテルの小さなケージに入れられ、自宅と環境が違う場所なので、ストレスを感じて体調を崩さないか心配だった。
ペットホテルの予約は3月に済ませ、4月中旬に書面で申込をしたが、その時、店員にホテルのケージの大きさを確認したら、お店の子猫の販売用に使っているケージの2/3程度の大きさと言われたのだ。
一応、環境省の省令で定められた猫のケージの広さは遵守しているようだが、それにしても狭い。店員にペットホテルを見せて欲しいと言うと、
「それはできないんですぅ」
と、答えた。
このペットショップは店舗も多く、ペット病院も併設している。間違いはないと思う反面、ほんとうに大丈夫なのかと不安と心配が拭えなかった。
そして、4月下旬前払い金を支払いに行った時、違う店員だったので、再度ペットホテルを見せて欲しいと言うと、やはりそれはできないと言われた。なんでできないのかと問うと、
「(犬猫の)新生児もいるので、入れることはできないんです」
と、言われた。それじゃぁ仕方ないなぁ。
為念、今一度ケージの大きさを聞いてみた。すると、この店員は、
「猫ちゃんは、そこのケージを一回り小さくしたものです」
と、2段+ハンモック付きの広々としたケージを指さしたのだ。そのケージは、このショップで斑をお迎えした時に購入した自宅のケージと同じだった。
「一回り小さくても結構広いんですね」
と、前の店員が言っていたことと違うことを話すと、
「猫ちゃんは飛び跳ねたりして運動をしますので、2段ないとダメなんです」
と、答えた。前の店員は、犬のケージと間違えたのかな。
店員は続けて、
「それに猫ちゃんのケージは場所を取るので、うちの店舗では猫ちゃんはひとりだけしか泊まれないんです」
と、答えたのだ。
「え、じゃぁホテルの猫は斑だけ?」
「はい、斑ちゃんだけです」
一気にわたしの頭から心配・不安という文字が消えて、反対に沸々と笑いが込み上げてきた。それは、斑が泊まる期間、新生児の猫がいるのかは知らないが、少なくとも斑は犬たちに囲まれて2泊3日を過ごすことになる。愉快に思えたのだ。
6日10時、斑の2泊3日分に小分けした食料とキャリーバッグに入れた斑を安心してペットショップに預けた。
8日の帰り、最寄駅からタクシーでペットショップに寄り、斑を引き取ってから帰宅することにした。愛玩用の小動物は乗車できるので、乗車拒否はできない。
第五章 旅客
(物品の持込制限)
第五十二条 旅客自動車運送事業者の事業用自動車を利用する旅客は、次に掲げる物品を自動車内に持ち込んではならない。ただし、品名、数量、荷造方法等について、国土交通大臣が告示で定める条件に適合する場合は、この限りでない。
十四 動物(身体障害者補助犬(身体障害者補助犬法(平成十四年法律第四十九号)の身体障害者補助犬をいう。)及びこれと同等の能力を有すると認められる犬並びに愛玩用の小動物を除く。)
但し、小動物はキャリーバッグ等に入れて乗車するのがマナーだと思っている。また、猫アレルギーがある運転手には配慮して他のタクシーを利用する気遣いも必要だと思う。
帰宅した斑は以前と変わらず食欲もあり快活だった。体重は3.55kg(生後9ヶ月)から3.50kgと5g減っていたので、環境が変わり多少のストレスはあったのかな。

スマホは9日午前、宅急便で無事に自宅に届いた。斑にはホテル宿泊経験を、スマホには可愛い子に旅をさせた気分だ。
補足
- 法要:故人様を偲び、ご寺院による読経や焼香を行なう仏教的な儀式
- 法事:法要と法要後の会食までをあわせた一連の行事
- 宅急便:ヤマトホールディングスの登録商標
- 宅配便:ヤマトホールディングス以外の会社のサービスはすべて宅配便




















