友人から電話があった。
「LINEの画面が出てこないんだよ」
〈ん？ スマホのことかな〉
「LINEを開いても何も表示されないってこと？」
「スマホにさぁ画面がいっぱい出るじゃん。LINEの画面が無くなってんだよ。削除した覚えはないんだけどなぁ」
「それ、アイコンって言うんだよ」
「・・・アイコンって言うんだぁ、へぇー。でさぁ、LINEの画面が無いんだよ」
〈だから、アイコンだってえの💨〉
「LINEを再インストールすればいい」
「どうやるの？」
〈よく、スマホ使えてるな〉
「『Google Playストア』ってアイコンがあるから、それを開いて、LINEを『検索』してインストールして」
「うん、分かった」
と、電話を切った。
すると、しばらくしてまた友人から電話がかかってきた。
「やってみたんだけどさぁ、LINEじゃなくて別の画面が増えてるんだよなぁ」
〈アイコン😑〉
一体全体、コヤツは何をやっているんだ。電話では埒が明かない。友人も教えに来て欲しいと言うので友人宅まで行った。わたしのスマホはiPhone（iOS）なのにAndroidスマホの友人のことまで面倒をみるなんて我ながら感心する。
友人はスマホを見せながら、
「こんな画面が増えたんだよ」
と、言った。
見るとそれは、『Yahoo!メール』のアイコンだった。
〈どう操作したら『Yahoo!メール』に辿り着くんだ？〉
「『Google Playストア』からインストールしたの？」
「した」
友人のスマホを手に取り、
「これだよ」
と、『Google Playストア』のアイコンを指差すと、
「こっちかぁ」
〈何をやっていたんだキミは〉
さて、写真は友人の愛犬、雄の豆柴。
友人に年齢を聞くと、
「んー、5、6歳」
「・・・5、6歳ってなんだよ。愛犬の誕生日はちゃんと覚えておけよ」
「へへっ」
飼い始めた子犬の頃、友人宅に行ったことがあった。
「名前なんていうの？」
「ちび」
「ちびって、今はチビでも成犬になったらチビじゃないだろ」
「へへっ、いいんだよ〜」
豆柴って結構大きくなるんだね、全然「豆」じゃない。
それによく吠える。
わたしが友人宅を訪れることは年に1〜2度程度だが、毎回吠えまくられ今回も同じだった。
ちびはわたしと一定の距離を置いて立っている。
「ちび、ちび」
と、呼ぶと吠えるのを一瞬やめて “？？？” って表情を見せるがすぐに吠え出す。
「噛みついてくることないよね？」
と、友人に聞くと、
「ああ、それはないよ」
と、答えたが、愛犬の誕生日も知らない奴なのでイマサン信用できない。
ま、飼い主の友人がそばにいるから、もしものことがあっても大事ないだろう。
吠えまくりながら、尻尾は上向きでくるりと巻いて左右に小刻みに振っていた。犬は喜ぶ時は尻尾を振るって聞いていたが、吠えなから尻尾を振るのは警戒している時みたいだ。迂闊にちびに触れないでよかった。
LINEの再インストールをしていると、いつの間にかちびがわたしの足の匂いを嗅いでいた。おまえ、いつ近づいてきたんだ。少しは警戒レベルが下がったのかな。しかし、わたしがそれに気がつくと、ちびは後退りしてまたわたしと一定の距離を置いて伏せの姿勢をとった。
友人がLINE登録認証に必要なショップの書類を取りに2階へ行った。
ふと、あれ？ 今この部屋にはわたしとちびだけであることに気がついた。
ちびは吠えることはなかったが、一抹の不安がよぎった。ちびをチラ見すると、ちびはこちらを見ていなかった。わたしもちびとは目を合わさないように明後日の方向を見て、友人が戻ってくるのを待った。
なかなか友人は戻ってこない。
何してるんだ、早く戻ってこい。
おーい！ と、友人を呼ぼうとも思ったが、ちびがわたしの声に驚いて飛びかかってこないだろうか。ひたすら黙ーって、イライラドキドキしながら友人が戻るのを待った。
すると、ちびが、
“フホッ”
と、一声上げた。
人間だったら、「おい」とでも呼んでいるのだろうか。
わたし、当然シカト。
ちびもそれ以上わたしを呼ぶことはなかった。
友人が戻ってきて、LINEの再登録完了。
ちびも吠えることがなくなっていた。
