「太陽にほえろ! ベスト」CDを買う

 急にテレビドラマ「太陽にほえろ!」の『青春のテーマM1(ジーパン刑事のテーマ)』が聴きたくなり、YouTubeで久々に聴いたが、この曲は色褪せることがないですね。「太陽にほえろ!」を知らない世代でも、はじめてこの曲を聴いた人は、「何ていう曲?」「誰の曲?」と、問いたくなることだろう。

 四の五の言わずに、高揚感と躍動感が溢れるこの曲を聴くと、頭の中には確かにジーパン刑事が疾走しているシーンが浮かび、怠惰な体躯のわたしでも近所中を走り回りたい衝動に駆られるくらいだ(気持ちの話ね)。

「太陽にほえろ!」は1972年(昭和47年)から1986年(昭和61年)までの15年間続いた長寿番組で、放送開始当時小三だったわたしも最終話の時には社会人になっていた。物語の芯となる七曲署の刑事役には往年の銀幕スター石原裕次郎を筆頭に、個性豊かな俳優陣で固められていた。

シリーズの展開
  • 黎明期(1972年〈S.47〉 – 1974年〈S.49〉)
    マカロニ、ジーパン
  • 絶頂期(1974年〈S.49〉 – 1979年〈S.54〉)
    テキサス、ボン、スコッチ、ロッキー刑事
  • 激動期(1979年〈S.54〉 – 1982年〈S.57〉)
    スニーカー、ドック、ラガー
  • 第二の絶頂期(1982年〈S.57〉 – 1984年〈S.59〉)
    ジプシー、ボギー、トシさん、マミー、ブルース
  • 終盤 (1984年〈S.59〉 – 1986年〈S.61〉)
    マイコン、デューク、DJ

※Wikipedia「太陽にほえろ!」を参照

 母が石原裕次郎のファンだった。時代は下って、美空ひばりが亡くなった時、昭和が終わったと感じた人が多かったようだが、母にとっては石原裕次郎が亡くなった時、自分の昭和が終わったと感じたそうだ。そして、同氏のファンが傍にいたら、一緒に悲しみを共有し泣きたかったと話したことがあった。

 そんな母だったので、「太陽にほえろ!」の放送開始前から、
「石原裕次郎主演の刑事ドラマがはじまるわよ、はじまるわよ」
 と、嬉しそうに何度もわたしに番宣していたのだろう。

 しかし、当時のわたしの気持ちは母の気持ちとは裏腹に、同氏主演映画はわたしが生まれる前の作品ばかりで、ただの1本も観たことがなかったし、テレビでは稀に歌謡ショーに主演し『夜霧よ今夜もありがとう』や『銀座の恋の物語』を歌っているところか、松竹梅のCMで見るくらいで、同氏も中年になっていたので、まぁまぁかっこいいおじさん程度にしか思えず、母からそこまで熱心に「はじまるわよ、はじまるわよ」と、嬉しそうに待ち遠しく言われても、ジェネレーションギャップから母の気持ちを理解するのは難かった。

 ところが、いざ「太陽にほえろ!」の本放送が開始されると、若年層をターゲットにした刑事ドラマだったので、子供だったわたしにも充分内容が理解でき面白く、七曲署の刑事を演じていた俳優の面々にも惹かれ、毎週欠かさず見るようになっていた。

 そして、中学生になると黎明期から絶頂期になり、高校生になると激動期になり、他局では同じ時間帯に「3B組金八先生」がはじまり人気が出てきても、わたしは「太陽にほえろ!」を見続けていたが、いつしか惰性で見るようになっていた。

 したがって、殿下の殉職の回は運転する車が崖から落ちるシーンをかろうじて覚えているくらいで、テキサス・ボン・ロッキー・ゴリさんの殉職の回、スコッチの病死の回、長さん、ジプシーの転勤の回は記憶の片隅にもなく、ボギー、ラガーにおいては、「え、殉職しちゃったの⁉️」と見逃したが、悔やむこともなかったし、第二の絶頂期になると、知らないうちにレギュラーメンバーが加わっているほど見なくなり、終盤は1話でも最初から最後まで見た覚えがないほど「太陽にほえろ!」離れしていたので、山さんが殉職したことも知らなかったし、最終話も見ていないと思う。

殉職した刑事

  • マカロニ(52話)
  • ジーパン(111話)
  • テキサス(216話)
  • ボン(363話)
  • 殿下(414話)
  • スコッチ[病死](493話)
  • ロッキー(519話)
  • ゴリさん(525話)
  • ボギー(597話)
  • ラガー(657話)
  • 山さん(691話)

転勤した刑事

  • 長さん(520話)
  • ジプシー(545話)

「太陽にほえろ!」が、“つまらない” 刑事ドラマになっていったのではない。小学生でも楽しめる若年層向け刑事ドラマだったので、段々と成長するわたしには “物足りない” 刑事ドラマになっていたのだ。

 余談だが、渡辺徹(ラガー)は、登場した頃はスリム体型だったのに見る見るうちに肥大していき、デブは刑事らしくないと降板させられたとの噂もあった。実際に渡辺徹は石原裕次郎から、
「太り過ぎじゃないか」
 と、言われたことがあった。


 さて、「太陽にほえろ!」で欠かせないのが音楽だが、ある時BGMがやたらと流れることに気がついた。ワンシーンずつBGMが流れていたと言っても過言ではないくらい多く、このシーンでは『行動のテーマ』、このシーンでは『追跡のテーマ』、このシーンではそろそろ『愛のテーマ』が流れだすと、まるでわたしが音楽編集スタッフになったかのように分かるようになるとそればっかり当てに走り、ドラマに集中できず少々耳障りに感じたこともあったが、印象に残る曲が多く、各々のシーンとマッチングした曲ばかりだったことは確かだろう。なお、番組スタッフに大野克夫バンドを推したのは、ショーケンこと萩原健一(マカロニ刑事)だった。

 冒頭に記したが、『ジーパン刑事のテーマ』は元々『青春のテーマM1』という曲名だった。しかし、ジーパン刑事が走るシーンではこの曲がお決まりに流れたので後付けで『ジーパン刑事のテーマ』になったのだろう。

 同様に、

  • 『行動のテーマ(8ビート以降)』☞『マカロニ刑事のテーマ』
  • 『情熱のテーマM1』☞『テキサス刑事のテーマ』
  • 『冒険のテーマM1』☞『ボン刑事のテーマ』

 と、後付けされ、以降は『ボスのテーマ』『山さんのテーマ』『長さんのテーマ』『ゴリさんのテーマ』『殿下のテーマ』等々、七曲署の刑事名をつけた曲が多くなった。

 わたしがはじめて「太陽にほえろ!」のシングル盤レコード1を店頭で見つけ購入したのは小六の時で、聴きたと思った曲が収録されてなかったのは残念だったが、肝心の曲名が分からなかった。

 映画やテレビドラマのクレジットタイトルやエンドロールにBGMで使われた曲名が表示されることはまずない。今だったら、インターネットで「ほにゃららドラマの格闘シーンで流れたBGMはなんていう曲ですか?」と、質問すれば、教えてくれる人もあると思うが、当時はインターネットなんてものは存在しないアナログ時代でしたからね。情報量は段違いで少なく、情報収集手段は限られ、探し出すのは容易ではなく、わたしの頭の中ではその曲のメロディーが奏でられているのに、曲名が分からないフラストレーションを抱えていた。

 そして、地元のレコード店で「太陽にほえろ! 総集篇」のLPレコード2を見つけると、総集篇ならきっとわたしが聴きたい曲が収録されているだろうと購入したが、何が総集篇だ! その曲は収録されていなかったのだ。フラストレーションが続いた。

 それから、同レコード店で「太陽にほえろ! ベスト」のLPレコードを見つけると、今度こそ収録されていてくれとカセットテープ版3を購入して、帰宅後ラジカセで順番に聴いていったが、テープが半ばを過ぎてもわたしが聴きたい曲が流れてこなかったのだ。まさかこのアルバムにも収録されていないのか? と、少し不安になった11曲目……。
キターーー!
♪───O(≧∇)O────♪

 曲名は『幸福のテーマ』だった。日常のほのぼのとして安息なシーンで流れることが多く、1分弱の短い曲だったが、鉄琴(シンセサイザーかな)で奏でるメロディーが好きだった。

『ジーパン刑事のテーマ』を聴いた後に思い出したように『幸福のテーマ』も聴きたくなり、YouTubeで聴いてみると……なんだかなぁ、アレンジが加えられた『幸福のテーマ』で、わたしが子供の頃に聴いた素朴な感じの曲とは違ったのだ。

 テレビの歌番組でもよくあるでしょ。伴奏がリリース時のアレンジやテンポと異なるアコースティックバージョンやらオーケストラばりに派手にアレンジして歌っていること。リリース当時のままの伴奏で聴きたいわたしとしては、今更何をしてくれているんだ💨 余計なことをするなよってことなのだ。

 よって、中学時代に購入した「太陽にほえろ! ベスト」のカセットテープで聴こうとしたのだが、どこにしまったのか見当がつかず、仕舞いには探すのが面倒臭くなり、ならばとAmazonCDを購入しようとしたら、アルバムの数が多く目移りもしたが初志貫徹、素朴な『幸福のテーマ』が収録されている、わたしが一番思いれがある、黎明期・絶頂期の「太陽にほえろ! ベスト」CD4を購入したのである。

  1. 東芝レコードシングル盤「太陽にほえろ! 100回放映記念主題曲集」(1974年5月25日 AT-1066) ↩︎
  2. 東芝レコードアルバム 太陽にほえろ! 総集篇(1975年11月25日 AX-8033) ↩︎
  3. ポリドールカセットテープ限定商品「4周年記念盤 太陽にほえろ! ベスト」(1977年 CRF-5012) ↩︎
  4. ポリドールCDアルバム「4周年記念盤 太陽にほえろ! ベスト」(1992年10月1日 POCH-1151) ↩︎
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