主語を言え

 数年前の8月、友人らに暑気払い(飲み会)のお誘いの電話をしたら、
「暑気払い!?……暑気払いって何? ね、ね、ね、何? 何?」
 と、暑気払いの言葉も知らず、さもワクワクドキドキするイベントのお誘いと勘違いして、とんちんかんの返事をしてきた友人から昨夜電話があり、
「お忙しいところごめんね〜、あのさ、右半分が数字になるんだけど、これどうすれば元に戻るの?」
 と、連想ゲームばりのお問合せを受けた。

「右半分って何?」
「(わたしの質問をスルーして)いやぁ〜娘がいじっていたら右半分が数字になっちゃったんだよね」
「おーい、右半分って何??」
「え? 左側にAとかSとかDがあるよね、これはちゃんと表示され・・・」
「ちょ、ちょっと待って。何の話してるの??」
「パソコン」

 漸くわたしは、この友人がパソコンのキーボードの話しをしていることが分かり、Lを押すと3が表示されると言ったのでテンキーではなく、QWERTY配列キーボード本体のNumlockが固定されてしまったことを理解した。

 そして、Numlock解除方法を教えて一件落着したが、電話を切った後、主語もなく感性だけを訴えるこの友人にわたしは苦笑いした。

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