最初で最後であろうお座敷遊び

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 仕事の勉強会とか研修になると自分でも驚くほどに一切お誘いがなく、参加しようものなら、
「え! 藤泉庵さんも参加!?」
 と、言われるが、遊びとなると、多方面からこちらの承諾もなくデフォルトで参加メンバーに組み込まれたり、漏らすことなくお誘いがあるわたし。4月上旬に、
「芸者衆とのお座敷遊びがあるけど来る?」
 と、地元の知り合いから誘われ、一昨日 “浅草芸者衆のお座敷遊びと美味しい河豚料理を楽しむ会” と題して、東京は浅草にある某茶房に足を運んだ。

 とは言うものの、わたしの頭に描かれたのは、時代劇でよくある芸者衆と戯れる武家や金持ちの商人(あきんど)のシーンや、高倉健主演映画『あ・うん』での芸者遊びのシーンだった。

 確か参加者はわたしを含め4名だったよなぁ、誘われたときに会費は言われていたが、芸者には御捻おひねりってぇもんを出さなければいけないんだろうなぁと、そんな不安も抱えながら、小市民らしく、可愛らしく、10万円を財布に入れてデビューしたのだが、参加者はわたしたちだけでなく、氏素性も分からぬ他のお客もいる、不特定多数を相手にする何名様限定の体験入学みたいなもので、結果会費だけで済んだ。ほっ。

 お店は言問通りから富士通りに入り最初の裏通りに面していて、玄関を入ると左側に10名ほど座れる長テーブル席が縦に置かれていて、そのテーブル席の先に12畳ほどのこじんまりとした座敷に10名が座れる席が用意されていて、わたしの席は芸者衆の舞がかぶりつきで見られる、相撲だったら砂かむりの正面タマリ席最前列と等しい座敷席だった。

 宴は18時開始だったが、10分15分前には芸者衆が見え、花柳界の太鼓持ちで有名な櫻川七好さんもやってきた。

 太鼓持ちとは、お客の機嫌を取ったり、盛り上げたりする仕事で、七好さんのことをわたしは知る由もなかったが、ひと目見ただけで、この人は芸人だなと感じた。

 宴では七好さんも芸を披露したが、言ってみれば素人でもちょっと練習すれば、会社の宴会芸にもなる知れた芸。でもね、違うんですよね、プロの芸は。板についているし、お客を楽しませるさじ加減を心得ている。なので、なんでもない芸でも七好さんがやると心地良く笑わせてくれる。いやぁ感心したなぁ、さすがプロだ。

 美味しい日本酒とふぐ料理に、芸者衆の舞と七好さんの芸と投扇興に興じ、一時お大尽にでもなったような気分になったわたしである。

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