ズボンプレッサーを買っちまった

 のっけから暴言を吐きます。
「こんなもん買うつもりは毛頭なかった」。

 そもそもズボンプレッサーは、わたしには生涯縁のない代物だと思っていた。第一、ズボンプレッサーなるものは、ハイソサイティの方々のアイテムでわたしには到底不釣合だと思っていた。それなのにズボンプレッサーを買ってしまったのである。

 大本の切っ掛けは、
「なんだ! この料理は!! 女将を呼べ!!!」
 と、仲居を怒鳴りつける海原雄山の口調と言っても過言ではない言い方で、
「なんだ! そのヨレヨレのワイシャツは!!」
 と、旧友から飲んだ時に罵られたことにはじまる。

 もともと、わたしはワイシャツは1回着たらクリーニングに出していたのだが、ワイシャツ自体にヘタレが見えてきてクリーニングするのは勿体ないと自分で洗濯をするようになり、その後は「アイロンがけめんどっちーなぁ、しわくちゃだけど・・・なんでもありの現代のファッションだからいっか」と、独りよがりの身勝手な持論を繰り出しアイロンがけはオミットし、刑事コロンボに勝るとも劣らないしょぼくれたヨレヨレのワイシャツを着て大衆の面前に我が身を晒していたのである。

 そして、社でも客先でもヨレヨレのワイシャツのことは飲んだ時でさえも指摘されたことがなかったので「これでいいのだ」と、ますますいい気になっていた矢先に、
「なんだ! そのヨレヨレのワイシャツは!!」
 と、件の旧友から罵倒されたのである。
 良しにつけ悪しにつけ本音を言ってくれる旧友はありがたいものだ。

 ♪やっぱりね、そうだよね、と省みたわたしは即ワイシャツ5枚を購入し、以前とおり1回着てはクリーニングに出すようになったのである。

 要はアイロンがけが面倒臭いことが起因しての顛末だったのだが、ズボンのアイロンがけも同様に面倒臭いことを旧友に話したら、
「ズボンプレッサーを買えばいいじゃん。オレ使ってるよ」
 と、さらっと発したのである。

 この瞬間、わたしはズボンプレッサーはハイソサイティの方々のアイテムであることが思い込みであったことを認識した。

 旧友は続けて、
「朝時間がないときでも出掛けにズボンプレッサーにズボンを15分くらいセットするだけでシワが取れ、折り目もしっかり付くので楽だよ。値段もそう高くはないと思うよ」
 と、話したのである。

 この時点になるとわたしはズボンプレッサーは庶民が使っても全然OKなんだなぁと確信し、ならば、買おうと購入したのが英国CORBY社製の4400JTBズボンプレッサー。

 最初は国内のT社製のものを買おうと思っていたんです。価格もCORBY社製と比べると安いですからね。量販店の店員さんも、

「普段着ているスーツだったらT社製で十分ですよ。CORBY社製のは高級スーツ向けですから」
 と、言っていたので。

 話は前後するが量販店に行く前の先月、高崎に出張した際に宿泊したホテルの部屋にT社製のズボンプレッサーが置いてあったのだ。

 これはいい経験ができると、早速使ってみたのだが、T社製の場合、プレス板とプレス板との間にプラスチックのプレスシートがあり、それを挟むようにしてズボンをセットするので、はじめてのわたしにはなかなかうまい具合にセットできなかったり、仕上がりも「なんだかなぁ~こんなものなのかなぁ~」だったのである。

 もし、この経験がなかったらわたしは間違いなくT社製のものを購入したと思うが、この一件からわたしの気持ちは割高のCORBY社製に傾き、そして、念には念を入れてネットでT社製とCORBY社製との違いを調べたり、コンシューマーのレビューを参考にしてからCORBY社製のものに決めたのである。

 CORBY社製のズボンプレッサー、なかなか良いです。あまりにもズボンがビシッとプレスされるので購入直後は一気に4本プレスしちまった。のっけの暴言は誤りだったと謹んで訂正いたします。

英国CORBY社製ズボンプレッサー(4400JTB)
目次