「日清ラ王」生産終了で思い出すこと

 1992年の発売以来、幅広い世代に親しまれてきた日清食品のカップ麺『日清ラ王』が、2010年8月をもって生産を終了することになる。

 発売当時、わたしが勤めていた会社の給湯室にはなぜか『ラ王』が段ボール詰めで置かれていて社員は自由に食べることができた。わたしも深夜残業や徹夜の時、食べる気はなくてもひとりの社員が食べだすとその匂いにそそわれて食べたものだった。

 さて、『ラ王』と聞けば大概の人はカップ麺を連想されることだろう。
 しかし、わたしは違う。正確には『ラ王』ではなく『ラオ』なのだが『ラ王』と聞くと高校時代、隣の席にいた女子生徒を思い出す。

 世界史の授業で教師が、
「今度の試験で “ファラオ” は出るかも知れないぞ」
 と、言って、その通り試験の回答として出題された。

 試験結果の答案用紙が返されたとき彼女は、
「え゛ー」
 と、しょげていた。どうしたのかと聞くと、
「わたし、ここはしっかり暗記したんだよ。くやしい~」
 と、嘆きだしたのだ。

 彼女の答案用紙を見ると『ファラオ』ではなく『ラオ』と書かれていた。
「ラオじゃなくてファラオだよ」
 と、言うと、
「でも教科書にはラオって書いてあったもん」
 と、言うではないか。

 教科書を見るとなるほどねと思った。丁度、『ファ』と『ラオ』の間で改行されていて、

──古代エジプトの王のことをファ[改行]
ラオという。──

 と記載されていた。

 彼女の教科書を見ると確かに『ラオ』だけにマーカーで記しが付けられていたので、どうやら、『ファ』を見落として改行された『ラオ』が古代エジプト王の名前だと暗記していたのだ。

 なかなかあきらめがつかない彼女。見兼ねたわたしは、
「先生に理由を話せば、点数くれるんじゃないの?」
 と、煽ったら、素直と言うか純粋と言うか天然なのか教壇まで行き教師に理由を話し出した。

 様子を見ていると教師が、
「ダメダメ、そんなのダメ」
 と、首も手も横に振っていた。

 彼女は照れくさそうにして席に戻ってきた。
「ダメだってー」
「当たり前じゃん」
「ひどーい!」
 他人の不幸は蜜の味。

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