生前の母は、おせち料理を作っていた。結婚してからも義母と妻が作り、義母が亡くなってからは妻がひとりで作っている。
大正時代に作られた陶器の四段のお重は、相当前に一段を割ってしまい、わたしの時は既に三段重になっていて、詰めきれない料理は別のお重に詰めていた。陶器のお重は四段でひとつの絵柄だったので一段ぶっ飛んでいるのは悲しいものがある。
おせち料理は全てが手作りではないが、たくさんの食材を揃えて、せっせと作ってくれる妻には感謝の一言しかありません。
そこで、わたしも微力ながらも協力しなければと思い立ち、毎年エビは海老川でマッカチンを釣り、竹の子はひよどり坂の竹林から盗ってきて、これらを妻がうま煮・鬼殻焼き、若竹煮にしている。
↑うそです。
伊達巻は、毎年暮れになると30本作るご夫婦がいて、自宅用に1本、ふたりの子供夫婦に1本ずつ、27本は知り合いなどに作り、うちも1本を頂戴していた。しかし、一昨年おふたりとも80歳近くになり作るのをやめたため、昨年から市販の伊達巻になった。
↑ほんとうです。
さて、おせち料理で見た目に苦慮するのが黒豆煮だろう。昔、3日に友人宅へ行った時、友人の母親が作ったおせち料理が出された。その中に皺くちゃだらけの黒い物があり、酔いもあったせいか、凝視してもそれが何なのか分からず、
「これ、なんですか?」
と聞き、友人の母親が、
「黒豆」
と、答えた時は言葉を失ったが、聞かなければよかったと自省したものだった。
黒豆煮は手の込んだ料理ではない。出来上がるまで2〜3日と時間がかかることと、時間をかけた割には黒豆に皺ができたり割れたりして出来栄えが芳しくないこともあり、諦めて市販の黒豆煮を買うのだろう。まあ市販の方がコスパはいいけどね。
写真は毎年妻が作っている丹波篠山産の黒豆煮。鍋でさっと煮ては冷ますを3日間繰り返して作っている。調味料は三温糖、重曹、塩、醤油。そして黒光の艶を出すのに鉄玉子を入れている。
なお、最初に黒豆を水で戻す工程は時短(面倒臭いみたい)のため省いているが、それでも皺もなく、ふっくらした柔らかい、甘味旨味のある黒豆煮はできるものだ。
妻の黒豆煮が気に入った人もいて、毎年3家族に晦日、大晦日に手渡ししている。今年は元日に妻の姉家族が来訪した時も帰り際に黒豆煮を渡していた。義姉は黒豆煮を作るのをやめたのかな。
ともあれ、妻が作るおせち料理が食べられるわたしは幸せ者ですね。
と、年甲斐もなく惚気てしまう年初めであった。


















