自動走行システム搭載自動車

 高齢ドライバーに「運転に自信はありますか?」と質問したところで、高齢ドライバーは例え自信がなくても「ない」「衰えた」「不安を感じるようになった」などとネガティブな返答をするわけがない。そんなことを言ったら、”だったら運転免許証を返納しろ” ってことになるからだ。

「いいか、社長の命令には、”はい” の一択だけだ。嫌でも ”はい” だぞ。そうでないとキミ会社にいられなくなるからね」と同じで、高齢ドライバーは皆一応に「ある」と答えるしかないのだ。

 このような無意味な質問に、
「自信というか、足ですね」
 と、返答をすり替えた高齢ドライバーもいるが、ある意味賢い逃げ口上だと思った。

 さて、以下の表は『原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移』と『原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移』。グラフはこれらを基に世代別に作成したもの(リンク①、②参照)

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移
原付以上運転者(第1当事者)の世代別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移
原付以上運転者(第1当事者)の世代別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移
令和3年 (2021) 原付以上運転者(第1当事者)の世代別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移
令和3年 (2021) 原付以上運転者(第1当事者)の世代別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移

 平成23年(2011年)から令和3年(2021年)までの11年間のデータだが、年々全世代事故件数が減少傾向にあるのがわかる。

 表はいずれも原付以上の2輪も含まれるが、グラフ『〜交通事故件数の推移』、『令和3年〜交通事故件数の推移』を見ると70代の高齢ドライバーの件数は30〜60代より多く、80歳以上になると更に乖離があるが、それでも10代20代よりは少ない件数だ。にも関わらず高齢ドライバーを槍玉に挙げるのは、死亡に至らしめる事故が多いからだろう。

 グラフ『~死亡事故件数の推移』、『令和3年~死亡事故件数の推移』を見ると、道路を暴走するのが18歳、逆走するのが81の如く、80歳以上と10代がワンツーフィニッシュを11年間キープしていて、80歳以上は年下世代を見下すかのようにダントツ1位の件数なのだ。高齢ドライバーには免許証返納をしてくれと言いたくもなるだろう。

 高齢ドライバーが免許証返納をしない一番の理由は「まだ普通に運転できるから」が7割半を占め、他は「交通手段がなくなる」「不便になるから」「返納するほど運転能力が低下していない」と回答していて、運転理由としては6割強が「買い物のため」「通院のため」「仕事のため」と回答している(リンク③参照)

 令和元年(2019年)の75歳以上の免許保有者数564万人(内80歳以上227万人)。年齢別の返納率は、65歳以上3.1%、75歳以上6.2%、85歳以上14.4%だ(リンク④参照)

 高齢ドライバーの免許証返納率は更に上昇すると予測されたが、コロナ禍で自家用車の利用が増加して返納率は低下しているようだ。私感としては、コロナ禍に関係なく車が日常生活や仕事に欠かせない高齢ドライバーは免許証返納をしないと思う。

 さて、2021年11月国産自動車は自動ブレーキが義務化され、以降の新型車は衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)の搭載が必須となった。

 そして、現在では 「アクセルを踏む」「ブレーキをかける」「ハンドルを操作する」といった一連の運転動作を全てコンピューターで行う自動走行システム搭載の自動車もある。

 交通事故を減少させる改善策の一つとして、自動走行システム搭載の自動車を普及させていくのがいいだろう。そして、定期的に現行システムの機能を踏襲しながら、より安全な走行をするためのバージョンアップをしていき、最終的には自動走行システム搭載を義務化するのだ。

 ドライバーは目的地をナビに設定して走行開始するだけ。後はコンピューターが全てやってくれる。暴走も逆走も衝突も信号無視も歩道走行もアクセルとブレーキの踏み間違えもなくなる。スマホをいじっていても違反にならなくなっているかもしれない。寝ていようが、意識をなくそうが、事故ることなく目的地には着く。誤ってアクセル全開に踏み込んだとしても同システム作動中は効かなかったり緊急停車をする。車庫入れや縦列駐車のバック走行もコンピューターがやってくれる。走行中目的地が変更になる場合は、それをナビに話しかけると一時的にAEBSだけが作動し、この時だけは手動運転だ。そして、ナビへの目的地変更設定が完了し走行開始すると再び自動走行システムが作動する。免許証返納は死語になり、世代関係なく全てのドライバー並びに同乗者及び歩行者に安全安心がもたらさせる。

 テレビでは、
『まだ、車は運転するものだと思っていませんか?』
 みたいなキャッチフレーズの自動車のCMが流れはじめ、自動走行システム搭載が当たり前になり、
「え! まだ自分で運転しているの⁉︎ あぶなくね?」
 という時代が早く来ないかなぁと思う今日この頃である。

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